講談社タイガ創刊ラインナップの一冊。野村美月さんとしてはライトノベル以外のレーベルから出版されるのは初めてだそうで。
わたしとしても文学少女シリーズ以来の野村さん。一筋縄ではいかない作品を書くことはわかっていたので、結構身構えて読みました。
まぁ、身構える必要はなかったんですけど、でもすっごく好きなお話でしたね。めちゃ満足でした。
第一巻:晴追町には、ひまりさんがいる。 はじまりの春は犬を連れた人妻と
あらすじ
心に傷を抱えた大学生の春近は、眠れない冬の日の深夜、公園に散歩に出かけた。「二月三日は、『不眠の日』です」。そこで彼に話しかけたのは、ひまわりのような笑顔を浮かべる、人妻のひまりさんだった。もふもふの白い毛並みのサモエド犬・有海さんを連れた彼女とともに、晴追町に起こる不思議な謎と、優しい人々と触れあううちに、春近はどんどんひまりさんに惹かれていき……。
不思議な暖かさを持った作品
なんというか、すっごく雰囲気を持った作品でした。人妻にばかり恋する青年の話を、よくもまぁここまで暖かく爽やかに描けるなぁと。
それだけ聞いたら昼ドラ的展開しか想像できないですよ。モチーフはめぞん一刻だそうです。わたし読んだことないんですけどね、サンデー作品はちょっと疎い……。
この暖かさは、登場人物に悪い人がいないからだよなぁ。みんな個性的ではあるけど悪人は一人もいない。悪口を言っていたママさんですら子供が心配ゆえだしねー。
まぁでも、その中でもやっぱりひまりさんだよなぁ。この人の雰囲気がそのまま作品の雰囲気、暖かさの形になっていると思います。
人妻キャラでこの可愛さは反則だと思いますよ!
小さな悩みだからこそちょっとだけ共感できてしまう
好きすぎて不安になるだとか、好きだったものがいつかどうでも良くなってしまう不安だとか。傍から見たらどうってことないことなんですけど。でもだからこそ共感できちゃうんですよね。
軽くファンタジーしてるのに妙なリアリティがあるのはこういうところからかもしれないですね。
プリンのくだりなんてめっちゃくだらないのに、なんかわかっちゃうんですよねそういう気持ち。
なんというかキャラがみんな生きているって感じを受けますね。だからこそ、作中でもたった半年の短い期間なのに成長を感じられる。最後にそういう気持ちになれたってのはすごく良かったな。
第二巻:晴追町には、ひまりさんがいる。 恋と花火と図書館王子
あらすじ
夏祭り花火の目玉“虹のエール”三百玉が消失! 現場には、『ごちそうさまでした』と書かれた、犬の足跡つきの紙が……!事件に遭遇した大学生の春近は、どんな謎もきれいにしてくれるひまりさんに相談を持ちかける。電話ボックス落書き事件、町のアイドル・図書館王子の恋心、傷ついた少年の秘密――晴追町の優しくも不思議な事件を、春近は彼女と解決に乗り出すが……?
まさかの続編が!
続かないかなーと思ってた。一巻できれいにまとまってたから、これ以上続編だしても蛇足になっちゃうかなーって。
でも、続いてよかったって思ってます。晴追町にまたいくことができてよかったなーって今は思う。
この巻のラストの引きからしたら少なくとももう一冊はでるのはまちがいない。次巻でどうなるのかなーってのも一応楽しみではあるんだけど、でもそれ以上にもうちょっと晴追町は楽しめるかなーって思いのほうが強いかなー。
晴追町がどんどん魅力的になっていく
野村さんの他の本は文学少女しか読んだことがないんだけど、基本的にキャラクターを使い捨てにしないよね。ちゃんと掘り下げていく。
今回も、新キャラも出てくるんだけど基本的には前巻からのキャラに絡めてというか、それまでのキャラクターを掘り下げるためといった感じ。
主人公があんまり魅力的じゃないというかキャラが薄いから、その分それを補うために周りのキャラを濃くしているって感じなのかな。なんつーの、それこそ晴追町という街自体を掘り下げていっているっていうか、晴追町自体がひとつのキャラみたいになってきてるよね。
もう晴追町の魅力がヤバイ。
可愛すぎる人妻シリーズ
町の魅力はもちろんなんだけど、でもやっぱりこのシリーズはひまりさん。可愛すぎる人妻。
町と人妻と、そしてそこに住むキャラクターみんなが揃って晴追町。でもやっぱりひまりさんがいてこそなんだと思う。
九州の方言喋る、ふんわり系人妻とか最強でしょうよ。これだけでご飯10杯くらいいけそう。変な意味じゃなくってね。それくらい楽しめるって意味で。
とはいえなんだかんだでこのシリーズが続いてくれてよかった。嬉しい限り。
それではまたー。