新庄耕「狭小邸宅」感想。仕事が楽しくなったその先の危うさ

作家
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たまたま作者のインタビュー記事を見かけまして、ネットワークビジネスが題材とした作品を書かれているようで面白そうだなーと。

その新庄耕さんのデビュー作がブラックな不動産屋のお話でKindleで安く読めそうだったので先に読んでおこうかなと。

結果それは正解で、いい本だったなーって思います。働くことはかくも難しい。

あらすじ

学歴も経験も関係ない。すべての評価はどれだけ家を売ったかだけ。大学を卒業して松尾が入社したのは不動産会社。そこは、きついノルマとプレッシャー、過酷な歩合給、挨拶がわりの暴力が日常の世界だった…。物件案内のアポも取れず、当然家なんかちっとも売れない。ついに上司に「辞めてしまえ」と通告される。松尾の葛藤する姿が共感を呼んだ話題の青春小説

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成功までのカタルシスはたしかにある

営業の仕事なんて売れなきゃタダ飯喰らい同然で、そりゃきつい仕事なんだろうなーってのは想像に難くない。

暴言は当然で殴る蹴るの暴行まであるブラック企業ってすさまじくって、結構きつい描写でもある。自分の職場じゃあ想像できないもんなー。

家なんてそりゃ簡単に売れるもんでもないんだから、売れる奴と売れない奴の差なんてどんどん開く一方でしょうよ。

ボロッボロになって一念発起して、そこから誰も売れなかった物件を売るところなんてたしかにカタルシスがある。戦略通りにバシバシ決まっていくシーンはホントにおもしろかった。

まともに仕事をできない一方で、その仕事をわかった気になるななんてのはホントにその通りで。ブラック企業の論理だなんて言われそうだけれど、仕事ができない人ってのはそもそもやるべきことをやっていないことが多い。

どれだけ道を知っているかだとか、運転に慎重になりすぎるなだとか、不動産屋のそういったところはリアル感あってもしろかったです。

最後はどれだけ言い切れるか。買いましょう!って言える営業マンってたぶん最強ですよね。お客さんがホントにほしい言葉ってこういうものだと思うんです。

仕事が楽しいは危険な徴候なのかもしれない

カタルシスがある一方で、ラストはなかなかすっきりしない。

仕事がうまくいかない時にはうまくいかないなりの悩みなりがある一方で、うまくいったらやっぱりそれはそれで問題が出てくる。

仕事ってうまく行きだすと途端に楽しくなっちゃうんですよね。でもこれってホントは危険な徴候なのかもしれないなーって。

自分の基準も上がっちゃって、これくらいはできるはずだって基準がどんどん厳しくなる。うまくいっているうちはいいけれど、ちょっとつまずくとそれが一気にプレッシャーになる。

仕事に振り回されちゃいますよね。お金だとか目的がないからこそ余計に仕事だけになっちゃう。

いろいろと考えさせられましたねー。仕事とのつきあい方って難しい。この辺のバランス感覚がいかにとれるかが仕事だけじゃなくって人生を良くするための鍵なのかなって。

仕事に悩む人に勧めたいような、勧めたくないような。笑

単純にエンタメ作品としてもおもしろいので、仕事に対してどうこうとか考えないで読んでもいいかもですね~。

それではまたー。